文章の作成を仕事にしているのでキーボードには結構こだわっています。
黒軸と呼ばれるタイプのメカニカルキースイッチを採用したキーボードを使ってみたり、究極のキーボードの一つといえるRealForceシリーズで感激してみたり。
そして最近はしばらくロジクールの「Flow」機能にリンクさせるために同社のパンタグラフタイプのキーボードを使っていました。
そして色々とあって、結局一周して以前使っていたキーボードに戻ってきてしまいました。それが今回取り上げるロジクールのイルミネートキーボードK740です。
有線接続でパンタグラフタイプ。そしてパンタグラフタイプながら従来型のキーボードに近い深いストロークを持つ製品です。
何故ここに戻ってきたのか、そのあたりを説明するために、キーボードに関して少し「濃い」かもしれないお話をしていきます。
パンタグラフ型キーボードのメリット
最近、Amazonでなんとなくキーボードのユーザーレビューを眺めていて気づいたことがありました。パンタグラフタイプのキーボードに関していくつか誤解されているっぽいポイントがありそうな点です。
元々の地点で考えてみると、パンタグラフタイプのキーボードのメリットは
「キートップのぐらつきが少ないこと」
この一点だけだったはずなのです。
ですが「ハッキリしたクリック感」をこのタイプのキーボードの優位な点と考える層がある程度出てきている感じでした。
実はここって、元々は「苦肉の策」だったはずなのですよ。
一般的にパンタグラフタイプのキーボードではキーストロークを長く取ることが構造的に難しくなっています。ですので、その浅いキーストロークの中でしっかりした打鍵感を演出するために、半ば仕方なく導入したのが強めのクリック感です。
これがいつの間にかパンタグラフタイプのキーボードの主たる特徴と捉えられるようになってしまったのかもしれません。
メンブレン的キータッチ??
今回著者が回帰したキーボードのロジのイルミネートキーボードK740ですが、このキーボードに対するネガティブな評価として「メンブレンのようなキータッチ」というものがありました。
これも実は半分正解で半分間違いのような…。
ほとんどすべてのパンタグラフ型キーボードの押し圧と反発力は、メンブレン型キーボードと同じラバードームで作っているからです。
登場した当初のメンブレン型ではラバードームの作り方のノウハウもなかったのでしょう。「ぐにゃ」っとしたあまり気持ち良くない独特の押し心地のものしか作れませんでした。
ですが今はラバードームの作り込みのノウハウや技術が蓄積していますので、ラバードームでも非常に色々なキータッチの演出が可能になっています。
ハッキリしたクリック感を演出しているパンタグラフタイプのキーボードも、キータッチ自体はラバードームが作っているはずなのです。
ちなみにK740は「ぐにゃっ」という感じではなく、もっと軽い「ふかっ」としたタッチです。押し圧は奥まで比較的一定。最初の抵抗感は小さめ、その障壁を越えてもあまり軽くなりません。ですので、「クリック感」という感触は受けにくいタイプでしょう。
キータッチは軽めですがさすがにRealForceほどの軽さはありません。
変えた理由は「疲労感」
今回著者がキーボードを変更した理由は、長文を一気に入力したあとの手、といいますか指の関節の疲労感が原因です。
どうも最近、3,000~4,000文字程度の文章を一気に作成すると特に右手の指の関節が重く感じられるようになってきました。この辺を何とかしたかったのです。
疲労の理由としてちょっと思いついたのは、パンタグラフタイプならではのキーストロークの短さと強いクリック感でした。
ハッキリしたクリック感を演出するためには、キースイッチ押し始めの押し圧をやや重目にして、そこを通過した後、押し圧を一気に軽くする必要があります。
そういった特性のスイッチをストロークが短い中に押し込むと、最初の重さを抜けた勢いのまま指がキースイッチのベースに「衝突」するような感じになります。この辺りが疲れの原因なのかなと。
そこで、パンタグラフタイプながらキーストロークが長く、押し圧が軽くて変化も少ないK740をしばらく試してみることにしたわけです。
ロジクール イルミネートキーボードK740のタイプ感
既にいくつもこのキーボードの感触の特徴を書いてきていますが、このキーボードはパンタグラフ型の構造を持つキーボードとしては異例と言っても良いぐらいに深いキーストロークを持っています。
まあ、数字にすると1mm差はないのですが、デスクノートで一般的な2.5mmよりも少しだけ大きな3.2mmのストロークがあります。モバイルノートPCなどではわずかに1.5mm程度のストロークが一般的ですので、そちらと比べると感触は大きく違います。
また、押し圧は最初から最後まで軽め。
キートップのぐらつきはパンタグラフ型らしく非常に少ないのですが、メカ部分の工作精度は若干甘いようでタッチ音はそこまで静かではありません。
まあ実はタイピングの際には、ある程度、音が出た方がタイプする際のリズムは作りやすいのですけれど。ただ、あまりに音が大きいとオフィスで使うには支障がありますね。
ロジクールのイルミネートキーボードK740はそこまで五月蠅くはありませんが、静音キーボードではありません。
製品自体は古いもののため、キートップはアイソレーションタイプではありません。昔のデスクノート型。キートップの間にすき間がほとんどないタイプです。
バックライトがあるので文字部分は背面まで透過性がある素材が通っています。このためキートップの刻印が消える心配はありません。また、基本アルファベットのみが記載されていてひらがな等々の表記がないため、キートップが非常にシンプルな見栄えなのも著者のお気に入りポイントです。
キーボードで「額縁」という表記が正しいかは分りませんが、キーの外側のフレームが結構広め。ここもちょっと古さを感じるポイントですが、その関係で設置面積は食います。
厚さはないためパームレストがなくても普通にタイプできるユーザーが多いと思いますが、この製品はパームレスト一体型。その分さらに設置面積を食うのですが、手首の角度は理想に近い形になりやすくなっています。上手くマッチすれば疲労軽減にも効きそうです。
色々とこだわった作りになっているキーボードだけにお値段はやや高価ですが、たくさん文字を入力する方ならば最も依存する周辺機器はキーボードな訳ですから、少しこだわった製品に手を出してみるのもアリかもしれませんよ。
ただ、実際にそれぞれのユーザーにピッタリ合うタイプのキーボードが何かは、じっくり長時間使ってみないと分りにくい、というのはネックですね。
キーボードやマウスにトライアル的なものがあるとちょっとうれしい、かも?