「3万円PC」って使い物になるの?
ここしばらくのパソコン市場で少しずつ勢力を伸ばしているクラスに「3万円PC」とでも呼んだ方がいい感じの機種があります。名前の通りスペックを抑えることで3万円前後のお手頃価格を実現したノートパソコンです。
PC歴が長い方だとかつての低価格PC「ネットブック」のことを思い出してあまり良い印象を持たれないかもしれませんね。
ですが現在このタイプのPCは静かな人気があるクラスで、徐々に機種の数も増えてきている感じです。
先日、ツクモが販売する3万円PC、TSNB14UP1を購入してみました。こんな低価格のノートPCが本当に使い物になるのか、使用感をレポートします。
3万円クラスのPCの主流は
さてTSNB14UP1の具体的な使い勝手のレポートに入る前にこのPCと同じぐらいの価格のパソコンの中身のトレンドに触れておきましょう。
3万円程度の低価格ノートパソコンのCPUはほとんどがインテルの「ATOM」と呼ばれるCPUか、それとほぼ同じ内部構成をとるCPUを使っています。
やはりかつてのネットブックを覚えてらっしゃる方はATOMという名前を聞くだけでNGを出されるかもしれませんね。ですが今の世代のATOMはかつてのものとは完全に別物です。
現在のインテルのメインストリームCPUであるCoreプロセッサとはさすがに性能の差がありますが、そこそこ実用的な性能をすごく低い消費電力で実現してくれるかなり優秀な製品になっています。
で、肝心のTSNB14UP1ですが、実はATOM系のCPUではなく第8世代や第9世代のCoreプロセッサと同じ内部構成を持つCeleronを採用しています。ここが大きなポイントですね。
1つのプログラムはATOM系のCPUを搭載したマシンよりかなり速く実行できる可能性があります。
著者がTSNB14UP1を選んだのはこの辺りが理由の一つです。
スペックもザッと
TSNB14UP1のスペックも簡単にまとめておきましょう。
CPUはKabyLake-R世代のCeleron 3867U。デュアルコアで1.8GHz動作です。メインメモリは4GB。内蔵ストレージはSATA3接続のSSD 64GB。
ディスプレイはIPSパネルを使った14.1型フルHD解像度のものが使われています。
フットプリントはA4の紙より一回り大きな332.5mm x 223.5mm。厚さは21.8mm。重さは約1.5kgです。
使用感
標準の状態での使用感はすごく実用的、というのが合っているかなと思います。
特別に高速で動いてくれるわけではありませんが、Windows 10自体の操作でもっさり感とかを感じる部分はありません。ほとんどのシーンで動きはサクサクです。
一部アプリの起動で少し待つ部分がありますが多少気になるのはその程度。起動が遅いアプリも一度立ち上がってしまえば操作感自体には問題はありません。
SSDを搭載していてもCPUパワーがないせいかWindows 10起動直後に操作が鈍くなる時間が少しありますが、特に気になるのは数十秒程度だと思います。
動画編集とか、高解像度のデジカメの写真データのレタッチとか、高性能パソコンでも重い処理をやろうと思わなければほとんど問題がない程度の能力はある感じですね。
CPUに統合されているGPUはインテルHDグラフィクス610で今では統合GPUとしても非力なものですが、設定を少し落とせば軽い3Dもののゲームも動かせる程度の性能はあるようです。
ポリゴンを使っていない2Dのゲームだったらまず問題なく動かせます。
オフィスソフトやブラウザもスムーズに操作可能で事務仕事だったらこれ一台でまかなえそうな感触ですね。
ただ、メインメモリが4GBなので、同時に動かせるアプリの本数などにはやや制限は出てくる可能性はあります。
Windows 10起動後、何もアプリを立ち上げていない状態でメインメモリの空きは2GB弱です。ブラウザで大量にタブを開きながら作業をしようとするとどこかでメモリを使い切ってしまうかもしれません。
そういった点ではある程度の割り切りは必要になるマシンでもあります。
一応ベンチマーク
元々ベンチマークテストで性能を見るようなタイプの製品ではないですが、一応目安のために代表的なテストを行なってみました。
まずは純粋なCPU性能を見るためにCINEBENCHのR20。
スコアはわずかに、と言っていいかもしれません。285ptsでした。
デスクトップ向けCPUの4コアRyzenを1スレッドでテストしても367ptsのスコアが出ますので、純粋な演算能力は定格3.6GHz動作のRyzenの1コアよりも低いと言うことになります。
CPUパワーは予想通り低いですが実用上そこまで使用感が悪いわけではないです。かなり普通に使えます。
グラフィック性能はドラクエXベンチで見てみました。
解像度1,280 x 720ドット、描画クオリティ普通の設定で3,600ポイント台。普通の評価がもらえます。ベンチマークテストは割とスムーズに動いていましたので、この設定ならそこそこ普通にゲームできそうです。
内蔵SSDの性能は定番のCrystalDiskMarkを使いました。
SATA3接続のSSDとして見ても全体的に性能は低めですね。ただ、それでもHDDやeMMC接続のSSDよりはずっといい数字が出ていますので、TSNB14UP1の使用感はこのSSDが支えている部分も大きいと思います。
割と使いやすいキーボードとタッチパッド、見やすいディスプレイ
キーボードはすごく余裕のある配置のアイソレーションタイプ。何かキートップ大きいなぁ、と思って測ってみるとキーピッチは20mm以上もあります。大きすぎて手の小さい人は逆に打ちづらく感じてしまうかも?
キータッチは高級感こそないものの、ハッキリしたクリック感があってかなり打ちやすいです。ただ、タッチ音は大きめ。
またタッチパッドもすごく面積があってジェスチャー操作がやりやすいです。ただ、タップの感度がすごく高くて誤タップが出やすい感じですね。パームリジェクションはしっかり機能しているようで、面積が広いタッチパッドでもタイピング中に変に邪魔されることは今のところありません。
ディスプレイはさすがIPSパネル、といった感じのすごく落ち着いた表示で、ノングレアな表面処理と相まってとても目に優しそうです。
まあ、逆に捉えると地味でコントラスト低めの表示のため、写真や動画で派手な見栄えは期待できない、ともなりますけれども。
残像感はごく普通のIPSパネルの割にはあまり気になりません。もちろん残像があるにはあるんですが。
裏技
この処置をやってしまうとメーカー保証は切れます。万が一、ミスってマシンを壊してしまっても保証は一切ありません。同じことをするときには自己責任の下で。
TSNB14UP1は割と簡単に裏蓋を空けられます。空けるとメインボードが見えて取り付けられているSSDが簡単に交換できる位置にあることが分ります。
使われているSSDはSATA3接続で2280サイズのM.2規格のもの。なので裏蓋さえ空けられればSSDの交換が可能です。
64GBの容量だとWindows 10を比較的快適に運用できる最低限のサイズです。SSDを交換して250GBぐらいにしてやると普段使いの実用性がグッと上がります。
使われているパーツは汎用品が多いようなのに加え今のWindows 10はOS自体がカバーしてくれるドライバーの種類がすごく豊富ですので、SSD交換後はWindows 10をクリーンインストールしてやると元通り利用が可能になります。
ちなみに4月上旬現在、TSNB14UP1を買うと1割ポイントが給付されますので、それに2千円ちょっと追い金するとSATA3接続でM.2タイプ、250GBのSSDが買えます。
結論
3万円PC、少なくともツクモのTSNB14UP1にはかなり高い実用性あり、です。
まあ何でもかんでもこの1台で何とかしよう、といったパソコンじゃないのは間違いはありませんが、このマシンの性格を理解した上で使い方をちょっと工夫すればごく当たり前に多くのPC作業が出来る能力はあります。
重さが実測でも1.4kgほどありますので持ち運んで使えるか微妙な所ですが、結構バッテリーも持ってくれるので頑張ればモバイル用途にも使えそうです。
著者は個人的に大満足の買い物になりました。